ここ数年リモートワークや外出制限があったことで、在宅時間が増えたと思います。家にいると間食が増えたり運動量が減って、いわゆる「コロナ太り」する方も多いでしょう。それと同時に、近年の健康志向の高まりから食生活の見直しやダイエットも少しずつ流行ってきています。
そこで、今話題なのが「ファスティング」です。身体の中に溜め込んだ脂肪や毒素を排出して、軽やかに身体をリセットする食事療法として注目されています。
ファスティングによって様々な身体の変化が見られる中で、よく聞くのが急激な眠気です。ただ眠いだけならともかく、頭痛やふらつきなどの症状が出る場合もあり、不安になる方も多いでしょう。今回はファスティングと眠気の関係について解説いたします。
ファスティングとは
ファスティングとは「断食(fasting)」のことです。飲食行為を意図的に断ち、一定期間胃腸を休ませることで体内のお掃除やデトックス、むくみ解消、ダイエット効果が期待できます。
精神修行としてファスティングを行う宗教もありますが、現代では医学的に健康を目的とした食事療法を指すことが一般的です。欧米諸国では肥満症の治療に、ロシアでは精神病患者の治療に、日本では心身症の治療に用いられることもあります。
現代版のファスティングでは、固形物を食べない代わりに、身体に必要な栄養素を摂るためのドリンクを併用する方法が多く行われています。ジュースを取り入れたジュースクレンズや酵素ドリンクを使った酵素断食など、やり方は多岐に渡ります。
ファスティングの流れ
ファスティングには準備食期・ファスティング期・回復食期があり、期間は半日のものから一週間以上のものまで様々です。期間によって効果が違い、年齢や目的、体調、生活スタイル、ファスティング経験などによって変わります。
私たち楽々ファスティングでは9日間の長期ファスティングを推奨しており、プログラムとしては下記の流れになります。
1〜2日目:準備食期間
3〜7日目:ファスティング(絶食)期間
8〜9日目:回復食期間
このプログラムが最も効果的にファスティングを遂行することができます。ただし、これはあくまでも私たちの推奨する一つの目安です。当然9日間の長期ファスティングは身体にもたらす変化やリスクも大きくなります。そのため、専門家の指導のもとで適切な準備・スケジュールを守って臨むことが重要です。
ファスティング中に眠くなる理由
ファスティングを始めると、断食中に眠くなった、という声を多く聞きます。さらに眠気とともに頭痛や吐き気、ふらつきといった症状が出る場合もあります。その理由は、断食によって身体がエネルギー消費を抑えるからです。
通常であれば、食べたものでエネルギーを作り出し、そのエネルギーを燃焼して活発に動こうとします。しかし、ファスティング中は普段よりもエネルギーが入ってこないため、身体が本能的に活動量を減らそうとして眠くなるのです。要するに「省エネモード」です。
また、低血糖による眠気も考えられます。それに加えて頭痛が生じることも多いです。低血糖になると、体内でタンパク質をエネルギーに変える動きが始まり、細胞の生まれ変わりが促進されます。
したがって眠気は好転反応と捉えて良いでしょう。しかし、気だるさやめまい、動く気力が出ないほどの倦怠感がある場合は要注意です。エネルギー不足に身体が対応しきれていない状態なので、エネルギーを補給する必要があります。
眠気の対処法
①仮眠
眠気の対処法としては、シンプルに寝ることです。ファスティング中はコーヒーや緑茶、紅茶、エナジードリンクなどでカフェインを取ることができません。身体の自然な反応でもあるので、可能であれば5分程度の仮眠を取るのがベストです。そのために前々からスケジュール調整しておくのも良いかもしれません。
②水分補給
とはいっても仕事や育児などで休めない場合は辛いですし、リスクも伴います。そういった場合は水を飲みましょう。ファスティング中は食事を取らないため、水分補給を忘れがちになります。そのため、時間を決めて意識的に水分をたっぷり取るようにしましょう。口に何かを含むことで眠気が紛れることもあります。
③軽い運動
散歩などの有酸素運動も眠気対策になります。自分のデスクからトイレまで歩いたり、意識して家事をすることもおすすめです。ただし、筋トレやランニングなどのハードな運動は逆に低血糖を促してしまうため控えましょう。
④塩分補給
ミネラルや塩分が不足している可能性も考えられます。眠気に加えて頭痛や吐き気がある場合は、少量の岩塩か梅干し(無添加)を舐めて様子を見ましょう。 少し摂取してみてそれでも収まらない場合は、ファスティングを一時中断しましょう。
眠気のピークは2日目?
ファスティング中の眠気は断食2日目がピークになることが多いです。その理由として、身体のエネルギー回路が切り替わり始め、省エネモードへと移っていくのがそのタイミングだからです。
今まで蓄えていたエネルギー(グリコーゲン)は2日目くらいに使い果たし、筋肉を分解しながら、脂肪を少しづつエネルギーに変え始めます。この切り替わるタイミングに眠気を感じやすいと言われています。
もちろん眠気のタイミングや度合いには個人差があります。いつ体調の変化が起こっても良いように、対策しておくと良いでしょう。
眠気に対する注意点
ここまでで「ファスティング中は眠くなるもの」とご理解いただけたかと思います。そのため、いくつか注意点を確認しましょう。
①車の運転
車の運転をする際は十分注意してください。事前に運転をしなくて済むようにスケジュール調整したり、ファスティング自体を控えることも必要です。通勤などでどうしても運転しなければいけないなら、仮眠しても良いように時間に余裕を持たせましょう。
運転をするなら、身体が安定してくる3日目以降がおすすめです。ただし好転反応により、眠気以外に判断力の低下やだるさなども生じることがあります。自己責任の上、十分注意しましょう。
②カフェイン
また、先ほども述べた通り、カフェイン摂取もやめましょう。休ませている消化器官を刺激してしまいます。もちろんアルコールやタバコもNGです。
③回復食を食べた後
断食が終わって初めての回復食でやたら眠くなるのは、糖質の摂りすぎによる血糖値の上昇が考えられます。いきなり普段の食事の量に戻したり、揚げ物や炭水化物などを食べてしまうと、胃腸も荒れてしまいます。
回復食は「まごわやさしい」をベースに、野菜スープやおかゆなど胃に優しいものにしなくてはいけません。
まとめ
ファスティング中の眠気は好転反応の一種であり、ファスティングが正しく行われている証拠とも言えます。最初は辛いかもしれませんが、終了後には頭がスッキリしてぐっすり眠れるケースも多いです。
また、眠気以外に頭痛や寒気、集中力の低下などの好転反応が見られることもあるので、家でゆっくり休める時を狙ってファスティングを計画することをおすすめします。
いずれにせよ、無理は禁物です。異変を感じたら専門家に相談して、様子を見たり、やり方を変えたり、場合によってはファスティングを休止することも重要です。特に3日間以上のファスティングに臨む場合は身体への負担が大きいため、思わぬ事態になることもあります。
上手く好転反応と向き合い、安全で健康的にファスティングを行いましょう。